第二部 母と妻と女の狭間で・・・ 留学時代編
 最初、夢の中の出来事だと思ったすすり
泣きが、気が付けば、耳元で囁くくらいに
なっている。

 夢にしてはとてもリアルで、初めは
すすり泣きだと思った声も、どこか違った
ニュアンスだってことに気がついた。

 あさひを見ると、全然無反応で、ずっと
軽い寝息を立てていた。

 時計を見ると、朝5時前。
こんな早い時間に、起きてる人はいないはず。

 今でははっきりした頭の中で、いろんな事
を考えた。

 そして、女の声だから、泥棒や強盗の
たぐいだはなさそう。

  よく聞いてみると、ずっと泣いている
わけではなくて、大きくなったり、聞こえ
なくなったり。

 窓の外から聞こえたと思ったけど、
なんだかもっと近い感じがする。

 そして、女が一人ってわけじゃくて、
何人かいるらしい。

 でも、考えれば考える程、訳がわからな
くなる。

〈なんだ?〉

 それからしばらくすすり泣きが聞こえ
なくなって、静かになった。

 「結局何だったんだろう?」

 まだ、あたりは暗くて、もう少し寝られる。
そう思って、目を閉じると、今度ははっきり
聞こえた。

「あ・・・」

「!」

 その声は、あの時の声だ!
それでやっと理解した。

 その声は、そう、ヤマさんと琴乃(ことの)さん。
このアパートは木造で、部屋の壁は薄い。

 毛足の長い絨毯が敷いてあるから、足音
なんかは聞こえないけど、部屋の中の音や
声は、けっこう聞こえる。
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