私は、エレベーターで恋に落ちる
エスカレーターでレストラン街に行った。

「ここで、業務は終了だな」
伊村さんが、右手を出してきた。

「じゃあ、明日からオフィスに行くこともなし?」
私も返事をしながら、彼の手をしっかり握った。

「書類の確認でもう1度、来てもらうだろうけど、それは林田さんがやるだろうな」

「じゃあ、今日が最後ね」

なあんだ。

伊村さんともっと仕事ができると思って、嬉しかったのに。



カジュアルな店が並ぶレストラン街。

伊村さんは、どんどん先に行ってしまう。

夕食の時間が近づくと人が増えて来てた。

私は、彼のことを見失わないように急ぐ。



ガラスケースのサンプルを見ながら、どこに入るのか話し合ってるカップルが視界に入った。

そして、そのカップルに目が釘付けになる。

私は、人の群れの中に男性の、見慣れた背中を見つけた。

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