さよならの見つけ方 第2章 *絶対温度*
陽が落ち始めた頃、クリスが帰ると言い出した。
「私も本屋に行って来る」
と一緒に玄関を抜けると、本屋まで続く並木道を二人で歩いた。
薄暗い空に、春の風が流れていく。
道端に咲く花々の淡い香りが、風に乗せられて私たちまで届く。
長い長い付き合いになるクリスだけど、
クリスとは二人きりになってもこれといった話をしたことがないように思う。
偶然帰りが一緒になった時も、教室で隣の席になった時も、
今日も、今日だってただ、黙って歩くだけだ。
別にそれが気まずいとも思わないし、多分向こうもそれは同じだろう。