次期社長の甘い求婚
「本当にここで大丈夫ですので。ほら、早くしないと電車もなくなってしまいますし」

「そう?」


平気なフリをして伝えるも、いまだに鈴木主任の瞳は不安げに揺れている。


「もー、本当にここで大丈夫ですから!」


私は電車で、鈴木主任はタクシーで帰るところ。


ここで送ってもらっちゃったら、もっと辛くなっちゃう。
幸せな時間はここで終わりでいいんだ。


「今日は本当にごちそうさまでした。また明日からよろしくお願いします」


「うん、こちらこそ。……じゃあ帰るけど、もし途中で気分が悪くなったりしたら、遠慮なく連絡してね」


心配そうに掛けられた声に、胸がズキッと痛んでしまう。


最後まで優しいんだから。


その優しさが私を苦しめている、なんて考えもつかないんだろうな。
そういう人なんだ、鈴木主任は。


「ありがとうございます。じゃあここで」


早くこの場を立ち去ろうと、一礼し背を向けた。

するとすぐに背後から声が聞こえてきた。

「今日は楽しかったよー! 気を付けてね!」
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