次期社長の甘い求婚
聞きたいのにびっくりし過ぎて、言葉として出てきてくれず、ただ神さんを見つめることしか出来ない。


すると神さんは自分を落ち着かせるように大きく息を吐き、掴んでいた腕を離すと少し乱暴に涙を拭ってくれた。


わわっ!? なっ、なに!?


急に神さんの手が目元に触れたものだから、思わず目を瞑ってしまう。


「っとに、一瞬目を疑ったぜ。車で信号待ちしていたら、とんだ酔っ払い女がいるんだから。……それがまさかキミだとは」


呆れた物言い。
けれど目元に触れる手は、次第に優しくなっていく。


「年甲斐もなく全力疾走しちまっただろ?」


次第に表情は柔らかくなっていく様を、食い入るように見つめてしまう。


半月前、もう二度と話すことはないだろうと思った。

その証拠に今日までそうだったし。
それにあまりに一方的に帰ってきてしまった。

怒って当たり前なくらいに。


なのに、どうして私を見つけてくれたの?

駆けつけてきてくれて、優しく涙を拭ってくれるの?
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