次期社長の甘い求婚
あまりにまとめすぎた物言いに、すぐに反論に出る。


「全然違うから! ……それに正直、まだ鈴木主任のこと好きだし。もちろん気持ちは前向きになっているけどね」


「え~だからそれは、恭様に惹かれているからでしょ?」


「どうしてそうなるのよ! 私の話、ちゃんと聞いてた!?」


頑なに自分の意見を曲げようとしない亜紀に、鋭い突っ込みを入れてしまう。


「もちろん聞いていたわよ。でもその通りでしょ? 少なくとも美月の中で、大きな心の変化があったのは間違いなさそうだし」


なにもかも見透かしていると言いたそうな目で見てくる亜紀に、どこに視線を向けたらよいのか分からなくなり、泳がせてしまう。


そんな私に容赦なく亜紀は話を続ける。


「それにしても恭様ってばすごいわね。美月がボロボロになっているところに、タイミングよく現れちゃうんだから。それになに? 寝ちゃった酔っ払いのあんたになにもせずに、一流ホテルに泊まらせてくれた挙句、モーニングコールに朝食、着替えにメイクさんの手配だと? あんた、どれだけ恭様に愛されちゃっているのよ」


早口で捲し立ててきた亜紀に、頬が熱くなっていく。

「そんなこと、ないし」
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