次期社長の甘い求婚
自分のデスクに戻る途中の彼に声を掛ければ、やはり力ない笑顔が向けられた。


「本当? 助かるよ、いつもごめんね」


言葉はいつも通りなのにな。

弱々し声に、見ているこっちが胸を痛めてしまう。


「いいえ、気にしないでください」


早くいつもの鈴木主任に戻りますように。

私にはただ、そう願うしか出来なかった。




「つっ、疲れた……」


定時を一時間過ぎ会社を後にした途端、どっと疲れが押し寄せ、身体中の力が抜けてしまった。


いつも以上に鈴木主任は仕事を溜め込んでいて、同僚と共に先ほどまで手伝っていたのだ。


『もうあとはひとりで大丈夫だから』と言われてしまい、後ろ髪を引かれる思いで帰ってきちゃったけど……。


足を止め、会社を見上げてしまう。


「本当に大丈夫だったのかな? ひとりで」
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