次期社長の甘い求婚
あと少しで終わるだろうから大丈夫だろうけど……。

終わるのを待って、食事にでも誘ったりした方がよかったかな? そうしたらこの前のように、愚痴ってくれたかもしれないし。


そうは思うも、一度会社を出てきてしまった今となっては、どうしようもできない話。


トボトボと帰路についていく。


入社して一年と数ヵ月。
どんなに課長に怒られようが、ミスをしようがいつも前向きで、笑顔を絶やさない人なのに。


仕事に不慣れな私に、優しく丁寧に指導してくれたのは鈴木主任だった。

仕事でミスをして、落ち込んでいるときに励ましてくれたのも鈴木主任。


なかなか庶務課の輪に入っていけなかった私に、気遣ってくれてみんなとの仲を取り持ってくれたのも鈴木主任。


だから私は彼のことが好きになったんだ。


今は“好き”って感情が違うけれど、好きで尊敬している上司に変わりはない。


「……あれ? ここ」


考え事をしたまま歩いていたせいか、気づけば最寄り駅とは違う方向に向かっていたようで、立ち止まり周囲を見回せば見慣れた景色が広がっている。


「やだ、どうしてここに……」
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