次期社長の甘い求婚
バランスを崩した身体がいきついた先は、神さんの広く逞しい胸の中だった。


「やっと捕まえた」


そして苦しいほどギュッと抱きしめられてしまう。


「神さん……」


何度も何度も私の存在を確かめるように抱き寄せ、背中や髪に触れる大きな手のぬくもりに、愛しさが込み上げてくる。


行き場を失っていた両腕は、自然と神さんの背中へ向かってしまう。

もっともっと、彼のぬくもりを感じたい一心で――。


「美月……」


歩道の真ん中で人通りもある場所なのに、ここが外だということも会社の近くということも、視線も。

全部気にならないくらい、今はただ神さんのぬくもりを感じていたかった。


どれくらいの時間、お互いの存在を確かめるように抱き合っていただろうか。


「初めて知ったよ」


頭上で神さんはポツリと声を漏らすと、ゆっくりと私の身体を離した。
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