次期社長の甘い求婚
「俺だってこの仕事覚えるまで時間かかっちゃったし。だからそんなに気負わないで。課長や他の人にも引き継ぎしていくから。慌てずゆっくり覚えてくれればいいよ」


いつもと変わらない、鈴木主任のちょっと頼りないけど優しい笑顔。


庶務課に配属当初、緊張と不安でガチガチだった私に向けられたのは、この笑顔だった。


上司だけどちょっと頼りなくて、けれどとびっきり優しい笑顔。


第一印象から惹かれて、一緒に仕事をしていく中で気持ちは膨れ上がっていった。


優しくて一緒にいると和まされて。……この人と一緒に過ごすことができたら、理想の幸せを手に入れられるんじゃないかって。


鈴木主任のおかげで庶務課の中に溶け込むことができて、丁寧に教えてくれたから仕事も覚えていって。


好きって気持ちは確かにあったと信じている。

そんな鈴木主任がいなくなってしまうなんて……。


考えれば考えるほど、グッと堪えてきた気持ちが溢れて止まらなくなっていく。


聞いたって仕方ない。だってもう鈴木主任は全て決めてしまったのだから。
それでもだめだった。


「あのっ……! ひとつだけ聞いてもいいですか?」

「うん、もちろん」
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