次期社長の甘い求婚
鈴木主任にしてみれば、寝耳に水だ。

絶対自分の気持ちは打ち明けるつもりはなかった。……でも、言わずにはいられない。


「だけど必死に諦めようと思ったのは、鈴木主任が彼女のことを大切に思っていたからです。それに話を聞いただけでも分かるくらい、ふたりが想い合っていると痛感したから……」


だから何度も諦めようとした。
どんなに努力しても、私の気持ちは報われることはないと思ったから。


「それなのにいいんですか? 転職して住む場所が変わるってだけで、別れちゃうなんて……っ」


私には分からないふたりの問題だと分かっている。
だからこそ言えるんだ。


「後悔しないんですか!?」


無神経と思われてもいい。鈴木主任の決意が少しでも揺らいでくれるのなら。


だってなかなか出会えないでしょ? 長年付き合って結婚まで決意しちゃう人なんて。


もしかしたら彼女は鈴木主任にとって、運命の人かもしれないんだよ? それなのに、簡単に別れてしまってもいいの? 結婚の準備まで進めていたのに……!


考えれば考えるほど、気持ちは昂ぶっていく。


けれど目の前にいる鈴木主任が悲しげに目を伏せた瞬間、小さな後悔の波が少しずつ押し寄せてきてしまった。
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