次期社長の甘い求婚
抱きしめられている間も必死に抵抗するも、一向に今の現状は変わらない。
いい加減離してもらわないと、本当に誰かに見られてしまう。


「離してくださいませんか? それにこんなところ誰かに見られたら困るのは、神さんですよね?」


次期社長という立場であり、今は研修中の身である神さんが、勤務中に一社員の私と抱き合っていた、なんてことが噂で流れたら困るでしょ?


「それもそうだな」


思惑はズバリ的中したようで、ホッと胸を撫で下ろしてしまう。


よかった、やっと解放される。


なら一秒でも早く離してもらおうと身をよじらせた瞬間、抱きしめられたまま視界が反転していく。


「――え」


背中に回った手にグッと力が入り、床に触れている身体の面積少ないものの、足元はひんやりと床の冷たさを感じてしまう。


そして目の前には先ほど私が交換したばかりの蛍光灯をバッグに、神さんのドアップ顔。

状況が飲み込めず目をパチクリさせる私を見て、唇の端を吊るし上げた。


「俺が押し倒されていた、なんて噂が流れるのはまずい。その点、こうやって押し倒していた、という噂ならいくら流れたって大歓迎だけど。しかも相手がキミなら尚更だ」
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