次期社長の甘い求婚
背中に回っていないもう片方の手が伸びてきて、優しく頬に触れた。


驚きすぎて声も出せない。


神さんは私の思考を遥かに超えた言動を起こす人物らしい。


誰が想像できる? 昨日散々言ったのに、こうやって自ら近づいてくるとか。おまけに一枚も二枚も上手。
簡単に私の心をかき乱してしまうくらいの――。


好きじゃない相手だって、こんなことされたら誰だってドキドキしてしまう。

ましてやイケメンな彼にされたら余計に。


押し倒された状態で微動だに出来ない私。


さすがに気持ちを汲んでくれたのか、彼は「ごめんね」と小さく呟くと、やっと身体を離してくれ、退いてくれた。


彼の影で覆われていた光を取り戻し、徐々に平常心を養っていく。


乱された心臓の鼓動を押さえるように、胸を手を当てながらゆっくりと起き上がると、既に立ち上がっている彼が手を差し出してきた。


手を辿り彼を見れば、愛しい者を見る眼差しで微笑んでいる。


「ほら、つかまって」
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