次期社長の甘い求婚
なにを言われたって事実ばかり見つめてしまう。


「小野寺さんには理解できないことかもしれないけど……跡取り息子には、それなりの責任と重圧があってね。俺もそれなりに悩んできたから、高岡の気持ちは痛いくらい分かるんだ。そう思って、聞いて欲しい」


「いいかな?」最後に付け足された言葉。
そう言われてしまっては、頷かないわけにはいかない。


コクリと頷くと、神さんのお父さんはホッとし、珈琲を一口くちに含むと言葉を選ぶように話し出した。


「高岡とは同い年で高校から大学まで一緒でね、それにお互い親が企業家ということもあって、意気投合して。……だから高岡が小野寺さんのお母さんと出会ったときから、知っているんだ」


そうだったんだ……。


その後の神さんのお父さんの話に耳を傾けた。


「ふたりはお互いを想い合っていたよ。見ているこっちが羨ましくなるくらいにね。あのふたりなら、どんなに周囲に反対されたって、ずっと一緒にいると信じて疑わなかった。……でも、所詮俺達は生まれたときから人生は決められていたんだ。お互い会社を継がなくてはいけないっていう道しか、ね」


昔を思い出しているのか、遠くを見つめ話す姿に神さんを重ねて見てしまった。
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