次期社長の甘い求婚
「本当だよ、陰でこっそり見ては何度も警察に通報されていたくらいだ」


嘘……本当に? 私が気づかなかっただけで、何度も様子を見にきてくれていたの?


「運動会や発表会のたびに、こっそり見に行ってビデオを回して応援したり、高校や大学の合格発表のときは、朝一番に確認しに行ったり。……うちの会社にお母さんから就職を勧められて入社したんだよね?」


「……どうしてそれを?」


信じられない話ばかりで、頭が混乱してしまう。


「それは簡単。あいつが小野寺さんの母親に勧めたんだよ。うちなら業績も安定しているし、なにより俺をパイプにして様子を探れるからって」


声を押し殺して笑う神さんのお父さんを目の前に、唖然とするばかり。


「今日だってそうだ。小野寺さんの母親から結婚のことを聞いて、相手が私の息子だと聞き居ても立ってもいられなかったようでね、こうやって無理言ってわざわざ本社まで呼び寄せたんだ」


神さんのお父さんが話していることは、全て本当なんだよね?


そう分かっていても、簡単に信じることはできない。

今さら聞いても、幼少期の辛い記憶は消えることはないから。

それを察したのか、神さんのお父さんは私の様子を窺いながら言った。
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