次期社長の甘い求婚
「俺はお母さんと美月には、平凡であっても幸せな生活を送って欲しかったから、別れようと決断したんだ。……きっと無理に一緒になっていたら、ふたりに対する風当たりが強かっただろうから」

「……っ」


ずっと平凡な幸せを望んでいた。
お父さんとお母さんがいる当たり前の生活を。


けれど違ったのかな? 辛い思い出しかないと思っていた幼少期だったけれど、もしかしたらあの生活が私にとって平凡で幸せな暮らしだったの?


「そのことも踏まえて、今後のことよく考えて欲しい。……もし、美月が全てを受け入れる覚悟を持ち、恭介君も同じ気持ちならもう反対はしないから」


「……分かり、ました。考えさせてください」


身体中の力が抜けていく気がした。

返事をするだけで精一杯だった。


あれほど神さんがそばにいてくれるのなら、頑張ろうと思えていた決意の塊は粉々に砕かれてしまった。


好きって気持ちがあれば、どんなことも乗り越えられると思っていたけれど……違うのかもしれない。
それだけでは乗り越えられないものも、あるのかも。
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