次期社長の甘い求婚
これがお互いのためだったんだ。


神さんには神さんの、私には私が進むべき道に進んだだけ。
それでよかったはずなのに――……。


「……あれ? なに、これ」


ポタポタとファイル状に落ちていく雫。
それは紛れもなく自分の瞳から零れ落ちた涙だった。


「やだ、どうして涙がっ……」


慌てて拭うも、次から次へと溢れ出して止まらない。


「うっ……もう、なんで泣くかな!」


自分自身に突っ込みをいれ、力なく笑ってしまう。


これでよかった……なんてまだ全然思えていない。
だって私、今でも神さんのこと好きだから。


会わなくなれば、次第に忘れられると思っていた。
新しい生活に新しい出会いが、自然と彼の存在を消してくれると思っていた。


けれどそれは、とんだ思い違いだった。
次第に消えるどころか、ますます神さんを想う気持ちは強くなるばかりだった。


神さんは神さんの進むべき道に進んでいるというのに、私は全然前に進めていない。

まだ気持ちを引きずったままだ。
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