次期社長の甘い求婚
「男がこの場面で泣くなんて、情けないよね。……でも嬉しくてさ。こんな俺のことをひと時でも小野寺さんが、好きでいてくれたかと思うと」


眼鏡を外し乱暴に裾で涙を拭う姿に、だから私は鈴木主任のことが好きになったんだって実感させられた。


「もー嫌になるね。こうやって女々しいから好きな子のヒーローになれないんだ」


自傷気味に放たれた言葉。

そんなことない。だからそんなに悲し気に瞳を揺らさないで欲しい。


キリキリと痛む胸。

気づいたら必死になって声を上げてた。


「そんなこと言わないで下さいっ……! 必ず現れますから。鈴木主任にとって運命の人が」


私にとってたったひとりのヒーローは神さんであるように、必ず現れるはず。

世界でたったひとり。鈴木主任がヒーローになる相手が。


訴えかけるように真っ直ぐ目を見つめていると、最初は戸惑っていたものの、次第に顔を綻ばせた。

そして私の大好きだった満面の笑みでこう言った。

「ありがとう。……小野寺さんが言ったこと、信じて待ってみるよ」と――。


その日見た目を真っ赤にさせた鈴木主任の笑顔、私はきっと一生忘れないと思う。
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