次期社長の甘い求婚
その後私は退職し、あっという間に引っ越しの日を迎えた。


平日だというのにお父さん、そして神さんと会社に挨拶に訪れると、みんな一旦仕事を止め見送りに出てくれたのだ。


「本当に娘が長い間、お世話になりました」

「いいえ、こちらこそ」


お父さんと一緒になって神さんは社長に挨拶し、名刺交換するとなにやら仕事の話で盛り上がっている。


同業者だし、色々と話が弾んでいるのかもしれない。

三人の様子を微笑ましく見つめてしまっていると、急に肘で身体を突かれた。


「ちょっとなによ、美月ちゃん。とんだ上玉手に入れたじゃない」

「松田さんっ!」


ニヤニヤしながらやって来たのは松田さんだけじゃない。
みんなして松田さんに習いニヤニヤ顔で私を見つめている。


「専務、ありゃ負けても仕方ない! きっぱり諦めて正解だわ」


松田さんは鈴木主任の元へ歩み寄ると、「ご愁傷さま」なんて言いながら肩に手を置くと、みんなも同じようにうんうんと頷いた。
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