次期社長の甘い求婚
一呼吸置くと、亜紀は諭すように訴えかけてきた。


「御曹司が全員あの人と同じとは限らないんだよ? もしかしたら恭様はあんたが求める理想の暮らしを、与えてくれるかもしれないじゃない?」


「冗談! とてもじゃないけど、一ミリも思えないから」


キッパリ言うものの、亜紀は引かず強気に攻めてくる。


「それ偏見だからね! もしかしたら冴えない眼鏡だってあんたが過剰評価しているだけで、本当の姿は浮気しまくりの金遣い荒い最低男かもしれないじゃん」


「まさか! 鈴木主任に限ってそんなこと――……っ」


「あるかもしれないでしょ? ……人間なんて皆、いくつも顔を持っているもんじゃない。その顔を易々と他人に見せるわけない。深く付き合って見て、初めて知るのがほとんどじゃないの?」


さっきはすぐに言い返せたというのに、これには言葉が見つからない。

亜紀の言葉は全て最もな正論であり、頷かずにはいられないものだから。


押し黙ってしまうと、亜紀は追い打ちをかけるような一言を言い放った。


「人を見かけと偏見だけで判断しないことね」


グサッと心に刃が刺さった気がした。
完全意気消沈。まさに撃沈……。

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