次期社長の甘い求婚
時計台の下は目印にもなり、ちょっとした待ち合わせの定番スポットだけあって、この時間たくさんの人で溢れていた。


ベンチに座れた奇跡に感謝だ。

一日仕事を終えた身体で三十分以上立ちっぱなしで待っているのは、酷だったから。


しばしボーっとしたまま、視界に写る人達を観察してしまう。

そんなことをしながら早数分。
相変わらず通り過ぎていく人を目で追っていた時、「ごめん!」の言葉と共に、慌ててこちらに駆け寄ってくる人影。


人をかき分け見えた人物は、待ち合わせしていた神さんで、酷く慌てた様子に思わず立ち上がってしまった。


その間に神さんは私の前にやって来て、呼吸を整えるように大きく深呼吸した。


「ごめん、待たせた?」

「あっ、いいえ。私が勝手に早く来てしまっただけなのでお気になさらず」


時刻は約束の十五分前。

充分早く来てくれたというのに、神さんは心底申し訳なさそうにガックリ肩を落とした。


「いや、そういう問題じゃないだろ? こっちから誘っておいて待たせるとかありえねぇ」


本気で落胆する彼の姿に、面食らってしまう。
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