次期社長の甘い求婚
「あのさ、せっかく初めての食事だっていうのに、どうして遠慮なんてするわけ?」

「当たり前ですっ!」


どことなく不機嫌そうに顔を顰める神さんに、声を荒げてしまう。
するとますます神さんは眉を顰めるばかり。


「もしかして肉、嫌いだった? そうなら違う店にするけど」

「そういうわけじゃなくてですね。……もう少し敷居の低いお店にして欲しかったんです」


本音を漏らすと、すぐさま神さんは言葉を返してきた。


「俺が奢るし、気にしなくていい。どうせなら美味しいものを食べたいだろ?」


最もな話だけど、カチンときてしまった。


「違います。……あの、神さんの価値観を押しつけるのは、やめていただけませんか?」


神さんに悪意はないと思う。よかれと思って連れてきてくれたと思うけど、言わずにはいられなかった。


唖然とする彼を目の前に、言葉を続けた。


「私は別にこんな高級な料理が食べたいわけじゃありません。……そもそも勝手に断る術もなく誘ってきたのは神さんです」

「だから仕方なく来たと?」


間を入れずに問いかけてきた彼に、一瞬戸惑うも深く頷いた。
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