レーザービームの王子様


◇ ◇ ◇


オートロックの操作盤に伸ばしかけた手を、やっぱり躊躇って一度引っ込める。

気合いを入れるように、深呼吸。

よし、とひとつうなずき、今度こそ目的の部屋番号を入力して呼び出しボタンを押す。

数秒後、スピーカーから声が聞こえた。



《──はい》

「あ、……えと、すみません。すみれです」

《……どうぞ、入って》



相手の声が思っていたよりも普通のトーンだったことに、少しだけ安堵する。

ロックが解除された自動ドアを通り抜け、エレベーターで28階を目指した。


そうして到着したのは、見覚えのある茶色いドアの前。ここでもひとつ深呼吸してから、呼び鈴を押す。

中からすぐに足音が近付いて来て──私がこくりと唾を飲み込んだタイミングで、内側からドアが開かれた。



「……ほんとに、来た」



私を出迎えた家主が、ひとりごとのようにそうもらす。

顔を見られたことにほっとして、けれどすぐ、小さく頭を下げた。



「こんにちは、久我さん。……突然来てすみません」

「いや、いいよ。とりあえず、上がって」

「ありがとうございます。お邪魔、します」



彼の後に続いて、玄関へと足を踏み入れる。

久我さんはドアに鍵をかけると、私を先導するように部屋の奥に進んで行った。

私も、内心ドキドキしながらその背中を追う。
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