レーザービームの王子様
久我さんの家。酔った彼を送ったときは玄関までだったから、中は初めて見た。

日当たりのいい広々としたリビングだ。家具は黒で統一されていて、壁際の棚には野球ボールやトロフィーなどが飾られている。



「久我さん、あの……ケガの具合は、どうですか?」



リビングに足を踏み入れてすぐ、私はおそるおそる訊ねた。

五分袖のシャツにジーンズというラフな格好をした久我さんの左手には、痛々しい包帯が巻かれている。「ああ、」と彼は苦笑した。



「やっぱ、知ってたか。……今は固定してるからあんまり痛くないよ。だせーよなこれ、全治1ヵ月だって」

「……骨折って、聞きました」

「うん、そう。左手第5中手骨の亀裂骨折。つまりまあ、小指の骨にヒビが入ってるんだけど」



一応少しは動くよ、と、ちょっとだけ指を動かしてみせる。

私はあわててそれを制した。



「や、無理しないでください!」

「ははは。まあ、さすがにしばらくバットは振れないけどな」



笑って言うけど、きっと内心、かなり落ち込んでいるんだと思う。

だってさっきから、久我さんと全然目が合わない。

私はそっと下くちびるを噛みしめた。



「あのこれ、お見舞いです。ゼリーなんですけど、よかったら食べてください」

「おお。悪いな、ありがとう」



私が差し出した紙袋を受け取って、久我さんが言う。

彼にひもの部分を渡したとき、少しだけ指先が触れた。そんな些細な接触でも、私の心臓は簡単に鼓動が速くなる。
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