レーザービームの王子様
私が久我さんのスマホにメッセージを送ったのは、今朝のことだ。

『今日家にうかがっていいですか?』というそれに、彼は快く了承してくれて。まさに今私は、彼の住むマンションに来ている。

昨日のデッドボールを見て、いてもたってもいられなかったのと──彼に、大事な話をするために。



「ちょっと待ってな、今コーヒー淹れるから。適当にそのへん座って、」



キッチンに行こうとする久我さんを、シャツの裾を掴んで引きとめた。

驚いたようにこちらを振り向く彼に、小さく首を振る。



「久我さん、大丈夫です。お話したらすぐ帰りますから」

「は……なに、話って」

「今日は、昨日のデッドボールのお見舞いはもちろんですけど……あなたに謝罪するために、来たんです」



彼のシャツから手を離す。

白い包帯が巻かれた左手に一度視線を向けてから、その整った顔をまっすぐに見上げた。



「……ごめんなさい。私があなたの未来を、無理やり変えてしまったんですね」

「すみれ、」

「あの日……お兄ちゃんの、お通夜で……私は、久我さんに残酷なことを言った……っ」



私を見下ろす彼が目を見開く。ひゅ、と、息を詰める気配がした。

たぶん、今の私は、すぐにでも泣き出しそうなひどい顔をしている。

だけど、久我さんから目を逸らさなかった。……ここで逸らすのは、ずるいと思ったから。
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