毒舌王子に誘惑されて

「頑張り過ぎ・・・かぁ」

天井に向かってそう呟いてみた。
自分の言葉にますます気持ちが重くなってきて、私は両手で顔を覆った。

きっとひどい顔をしてると思う。


確かに私は頑張ってた。
それはもう必死に。

恋よりも遊びよりも仕事がしたかった。
夢を叶えることが一番大切だった。


頑張ることが格好悪いなんて、いつ、誰が言い出したんだろう。



入社してサブリナ編集部に配属されたばかりの頃、私は一番若い女の子だった。
サブリナの読者と同じ新人OLってやつ。

今流行ってるってブランドってどれ?
若い子に人気の俳優は?
一番行きたいお店は?

上司や先輩に聞かれる度に自信満々で答えてた。
リサーチなんてしなくても、流行は知ってて当たり前のものだった。


思えば、私が新人OLだった頃はみんなもっと頑張ってた気がする。

手間のかかる華やかな巻き髪。
ボーナスで奮発して買うブランドの時計やバッグ。
華奢なヒールのパンプス。
商社か広告代理店勤務の彼氏。

『ワンランク上のものを』って誌面でも煽って、たくさん広告を入れていた。

でも、今は違うんだよね。いつの間にか、本当にいつの間にか全部が変わってた気がする。

手ぐし風のラフなまとめ髪。
日常使いのプチプラブランド。
ワンピにスニーカー。
学生時代の彼と早めに結婚。

最近よく使うキーワードは『等身大』と『こなれ感』だ。
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