毒舌王子に誘惑されて
ーーかっこいいと思いますけどね。

葉月君の声が脳内でリピートされる。

優しいヒーローは現れなかったけど、天敵だと思ってた後輩が私の欲しかった言葉をくれた。

そのたった一言で、ものすごく救われた気持ちになっちゃうんだから我ながら単純だ。神様も呆れてるかも知れないな。


それから、葉月君の意外な一面を発見したことも私の頬を緩ませている原因の一つだと思う。

ふふっ、照れると早口になるんだよね。
目も絶対に合わさないし。

年下のくせに妙に落ち着いてて可愛げがないと思ってたけど、ちゃんと可愛いところがあるんじゃない。


「さっきまで泣いてたくせに何ニヤニヤしてんですか?」

葉月君が気持ち悪いと言わんばかりの顔でそう言った。

「別に〜。 何でもないよ」

私のニヤニヤは止まらない。
葉月君は頭にクエスチョンマークを浮かべていたけど、まぁいいかと言って私の腰に手を回した。

「ぎゃあ!?」

「足、歩けないでしょ。 送ってくから、タクシー拾いますよ」

驚いておかしな声をあげた私に葉月君は呆れたような視線をよこす。

そっか、足を気にしてくれたんだ。

「大丈夫ですか?」

「うん、大丈夫。 ・・ありがと」

葉月君が私の身体を抱えるように歩いてくれるから、ほとんど痛くなかった。

ちっとも色っぽい場面じゃないのに、触れ合っている身体の右半分が熱を持ったみたいに火照って、葉月君の香りに頭の芯がクラクラした。
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