毒舌王子に誘惑されて
「葉月もさ、そこらへんわかってたくせにあんなきつい事言って悪かったね。あいつは言葉が足らないっていうか・・」

「いえ、あれは皆の迷惑を考えなかった私が悪いので。 本当に申し訳ありませんでした」

私が謝ると編集長は嬉しそうに微笑んで話し出した。

「実はさ、サブリナの編集長の入江とは
同期なんだよ。 だから、美織ちゃんのことはうちに来る前から知ってた。
ファッション誌の編集長が夢なんだろ?
うちへの異動はショックだっただろ」

私が首をふると、編集長は隠すことないよと言って笑った。

「ありきたりな言葉に聞こえるかも知れないけど、無駄な仕事なんてないもんだよ。 僕はいい歳だからね、色々経験も積んで実感としてそう感じるようになったよ。

入江も言ってたけど、週刊誌のスピード感や臨機応変な対応を学ぶことはサブリナに戻った時に大きな力になるよ」

「入江編集長が?」

「うん。 うちで修行させて、そのうち返してもらうからなって言ってるよ」


その言葉はもしかしたら高田編集長の優しい嘘なのかも知れないけど、その気遣いが嬉しかった。

編集長の優しさに応えたいと思った。


「ありがとうございます。 たっぷり修行させてもらいます」

ーー無駄な仕事なんてない。

本当にその通りだ。 仕事内容がどんなものであれ、この人の下で働けることは絶対に無駄にはならない。そう思えた。
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