毒舌王子に誘惑されて
5.二兎追うものは・・
「なんつーか・・腐るほど金持ってそうなのに意外とせこい男ですねー京堂」

【ご休憩 5,900円 宿泊 12,000円 】とでかでかと書かれた看板を横目に見ながら、葉月君が言った。

私達は渋谷区内にあるいわゆるラブホテルの駐車場で、京堂 忍と大井アナのツーショットを撮ろうと二人が出てくるのを待ち構えていた。

ラブホテルと言っても、いかにもといった雰囲気はなく外観は普通のシティホテルとそう変わらない小綺麗な感じだ。

「まぁ、高級ホテルとか行かれちゃうとセキュリティ万全で写真なんか撮れないだろうし、俺らにとってはラッキーでしたね」

葉月君はカメラをいじりつつ、腕時計をちらりと見る。

「2時間半か・・休憩ならそろそろ出てくる頃ですね。 京堂もいい歳だし、延長はないと思うんだけどなー」

ーー美織さん、どう思います? と葉月君が私の顔を覗く。

これは絶対にからかってる!!


「知らないわよ、そんなこと。それに、泊まりかも知れないじゃない?」

私はぷいっと顔を背けつつ、素朴な疑問を葉月君にぶつける。
一般人の不倫ならともかく、芸能人なんて家を空けることが多いし外泊しても奥さんは疑わないんじゃないだろうか。

私の問いを葉月君はあっさり否定する。

「おそらく泊まりは無いと思いますよ。 大井アナは朝の番組持ってるし、この時間なら一度帰るんじゃないかな」

・・・そっか、たしかに。

自分の想像力のなさに、私はちょっと落ち込んだ。
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