毒舌王子に誘惑されて
「はぁ!? 葉月、お前は何にもわかってないぞ!!」

露骨にうんざりしている葉月君をものともせず、佐藤さんは持説のアイドル論を滔々と語り出した。

私はそんな二人の姿を眺めながら、珍しく手作りしてきたお弁当に箸を伸ばす。


若くて可愛いならーーか。


一般論としての話で、深い意味なんて無いんだろう。
大体、ハニーズのメンバーなんて全員10代だった気がするし、比べるのもおこがましい。

にも関わらず、その言葉にちょっとショックを受けている自分に呆れる。
逃げてばかりの私にはショックを受ける権利なんてないのに・・。




「お、おいっ、葉月。ちょっと来いっ。
どういうことだ、これ」

缶コーヒーを片手に、ひと息ついていた編集長が突然、血相を変えて立ち上がった。

呼ばれた葉月君本人はもちろん、滅多に聞くことのない編集長の切羽詰まった声にその場にいた全員が振り返る。

ーーパンッ。

編集長は派手な音をたてて、原稿をデスクに叩きつける。

「これ、春日 沙也加の熱愛。この記事は春日の主演映画の公開に合わせるって
向こうの事務所と打ち合わせたろ?
なんで、再来週号の原稿に混じってる?」

普段の編集長からは想像もできないほど動揺し、頭を抱えていた。
< 81 / 100 >

この作品をシェア

pagetop