毒舌王子に誘惑されて
私もリアルに来てから知ったことだったけれど、週刊誌に載せる有名人のゴシップ記事というのは大抵の場合、事前に所属事務所に確認を取っている。

大人の事情ってやつで、掲載写真のチェンジや掲載時期を調整したりという裏工作もこっそり行われる。

汚いなぁとは思うものの、週刊誌と芸能事務所は持ちつ持たれつの関係。
あんまり無下にしていると、今度は名誉毀損で訴えられてしまう。

今回の春日 沙也加の件は、どうせ出てしまうスキャンダルなら映画公開に合わせて注目を集めたい春日の事務所と、その方が売れるだろうというこちらの思惑が一致し、双方納得済みの調整だった。


だからこそ、約束を違えてしまったら信用を失う。

絶対に、春日 沙也加の記事は再来週号には掲載できない。
とはいえ、差し替え記事を今から準備するには圧倒的に時間が足りない。


編集長が頭を抱えたくなるのも当然の厳しい状況だった。


「どうした?こんな凡ミス、葉月らしくないなぁ。新人の頃だって、一度もなかっただろう」

「申し訳ありませんでした。月曜の入稿までに必ず差し替えを作ります」

葉月君は編集長と、オロオロと様子を伺っていた編集部メンバーに頭を下げた。

「簡単に言うけどなぁ、一から企画し直しで3ページ分だよ。熱愛記事は写真でかなりのスペース使うから、文字で埋めようとするときついんだよー」

編集長は頭をくしゃくしゃと掻きむしりながら、考え込んでいる。

そして、バンッと両手でデスクを叩いて立ち上がった。


「よしっ!
もう、ここはアレだ。 アレしかないね。
週刊リアルで最も読者人気が高く、部数も稼いでくれる不動のエースに頼ろう!
写真も入れられるから文字数も節約できて丁度いいじゃないか」

編集長は高らかに宣言した。
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