毒舌王子に誘惑されて
私はすぅっと息を吸うと、葉月君に向かって怒りをぶちまけた。

「馬鹿にしないでくれる!?
一緒に組んで仕事してるんだから、どっちかにトラブルが発生したらフォローするのも仕事のうちでしょ。

大体ねー、下らない意地はって葉月君一人でやって間に合わなかったらどうする気なの?原稿落とすつもり??
より確実な選択肢を選ぶのが、プロってもんでしょ」

一息に叫んだため、私はぜいぜいと肩で息をする。
葉月君は呆気に取られたようにポカンと私を見つめていたけど、私はそれを無視して佐藤さんに話しかける。


「佐藤さん。二人でも際どいところだと思うので、取材先選定とアポ取りのお手伝いお願いできますか?」

「もちろん。 候補リスト作ったら、アポ取りはバイト君達にも手伝ってもらう。 葉月と美織ちゃんは記事構成に取りかかって」

佐藤さんはにっこり笑って、快諾してくれた。きっと、私に頼まれなくても動いてくれるつもりだったのだと思う。


「葉月、素直に折れろ。今回は美織ちゃんが正しいよ」

佐藤さんが立ち尽くしていた葉月君の肩をポンと軽く叩く。

「ーーすみません。 助かります」

そう言って頭を下げた葉月君の表情はわからなかった。

私は裕司にドタキャンを謝罪するメールを打ち、すぐに仕事に取りかかる。
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