毒舌王子に誘惑されて
7.恋は落ちるもの、愛は育てるもの
葉月君に言った言葉に嘘はない。
もし、ミスをしたのが葉月君じゃない別の誰かだったとしても、私は裕司との約束より仕事を優先したと思う。
それが編集者として当然の選択だから。
だけど、今、
私が必死に仕事をするのは、何があっても入稿に間に合わせたいって思ってるのは、編集としての責任からじゃない。
私を動かしているのは、佐藤 美織という人間の個人的な想い。
葉月君の力になりたい。
葉月君らしくない落ち込んだ顔なんて、これ以上見たくない。
それだけだった。
もやもやしていた霧が晴れるように、自分の気持ちがくっきりと輪郭を持って見えてくる。
ーープルル、ルルル。
デスクに置いてある携帯が着信を知らせた。 私は画面を確認すると、すぐに席を立ち廊下に出る。
『もしもし、美織?仕事中にごめん』
電話の相手は裕司だった。
『ううん。私の方こそ、今日は急なキャンセルで本当にごめんね』
『ふっ。昔もよくあったし、全然気にしてないよ』
顔は見えないのに、裕司が優しく微笑んでいる姿が目に浮かぶ。
私が仕事を理由にドタキャンするのはいつものことで、裕司がそれを咎めたことなんて一度もなかった。
私はそれに甘えきっていたんだ。
『本当にごめんね。 今度、お詫びするから』
『ーーお詫びの代わりに、お願いしたいことがあるんだけど』
軽い口調ではあったけど、裕司の声は一段低くなり、緊張していることが伝わってくる。
『こないだは友達としてなんて言ったけど、あんなの嘘だ。
美織、俺とやり直してくれないか?』
『えっ・・・』
突然すぎる告白に、私は何を言ったらいいのかわからずに口籠る。
私が黙ったままでいると、裕司は話を続けた。
熱を帯びた裕司の声が耳に響く。
『シンガポールに行ってからも、ずっと忘れられなかった。
物分かりの良い振りをして別れたこと、ずっと後悔してる。
もう一度、美織とやり直したいんだ』
『裕司・・』
裕司は一呼吸つくと、いつもの穏やかで明るい口調に戻って、言った。
『返事は今すぐじゃなくていいからさ、考えてみて。
それじゃ、仕事頑張れよ』
混乱状態の私にそれだけ言い残して、静かに電話は切られた。
もし、ミスをしたのが葉月君じゃない別の誰かだったとしても、私は裕司との約束より仕事を優先したと思う。
それが編集者として当然の選択だから。
だけど、今、
私が必死に仕事をするのは、何があっても入稿に間に合わせたいって思ってるのは、編集としての責任からじゃない。
私を動かしているのは、佐藤 美織という人間の個人的な想い。
葉月君の力になりたい。
葉月君らしくない落ち込んだ顔なんて、これ以上見たくない。
それだけだった。
もやもやしていた霧が晴れるように、自分の気持ちがくっきりと輪郭を持って見えてくる。
ーープルル、ルルル。
デスクに置いてある携帯が着信を知らせた。 私は画面を確認すると、すぐに席を立ち廊下に出る。
『もしもし、美織?仕事中にごめん』
電話の相手は裕司だった。
『ううん。私の方こそ、今日は急なキャンセルで本当にごめんね』
『ふっ。昔もよくあったし、全然気にしてないよ』
顔は見えないのに、裕司が優しく微笑んでいる姿が目に浮かぶ。
私が仕事を理由にドタキャンするのはいつものことで、裕司がそれを咎めたことなんて一度もなかった。
私はそれに甘えきっていたんだ。
『本当にごめんね。 今度、お詫びするから』
『ーーお詫びの代わりに、お願いしたいことがあるんだけど』
軽い口調ではあったけど、裕司の声は一段低くなり、緊張していることが伝わってくる。
『こないだは友達としてなんて言ったけど、あんなの嘘だ。
美織、俺とやり直してくれないか?』
『えっ・・・』
突然すぎる告白に、私は何を言ったらいいのかわからずに口籠る。
私が黙ったままでいると、裕司は話を続けた。
熱を帯びた裕司の声が耳に響く。
『シンガポールに行ってからも、ずっと忘れられなかった。
物分かりの良い振りをして別れたこと、ずっと後悔してる。
もう一度、美織とやり直したいんだ』
『裕司・・』
裕司は一呼吸つくと、いつもの穏やかで明るい口調に戻って、言った。
『返事は今すぐじゃなくていいからさ、考えてみて。
それじゃ、仕事頑張れよ』
混乱状態の私にそれだけ言い残して、静かに電話は切られた。