恋に目覚めたシンデレラ
あの時の事を思い出す内に怖さが甦って来た。
目の前に滉さんがいることも解らなくなって矢嶋くんに押さえつけられた力の強さと恐怖でいっぱいになってしまった。
抗おうとして強い力にまた引き寄せられてしまう。
「葵さん、今あなたを抱き締めているのは誰ですか」
抵抗しようともがいている時に覚えのある温もりと声がスーっとあたしの中に入ってきた。
「滉さん……?」
目の前にいるのは矢嶋くんじゃない。
今、抱きしめているこの手は滉さん。
矢嶋くんから助けてくれたこの手を怖がる事なんてない。
「落ち着きましたか?」
「ごめんなさい。混乱してたみたいです」
「大丈夫ですか?」
「はい。もう大丈夫です」
宥めるように背中を擦っていた手が止まった。
「お風呂行ってきて下さい。ゆっくり浸かって少し長くなっても構いません」
葵はいったん部屋へと行き着替えてから浴室に入った。