恋に目覚めたシンデレラ

「すみません。ここで暫く待って貰えますか?」

後部座席のドアが開けられ運転手が男性に傘をさすと二人はそのまま建物まで歩いて行った。

葵が気になって外を見ると三枝という運転手だけ門の外で立っていて。
男性だけが中に入って行ったようだ。

あの運転手さんは黒ぶち眼鏡の人が出てくるまであそこでずっと待っていなければいけないのかな。
大変そう……。
外はだいぶ冷えて来ていたから寒いんじゃないかな。

乗っている車はエンジンが掛けっぱなしになっていた。
ヒーターが入っていて段々と体も温まってくる。

暫くして運転手だけが戻って来た。

「まだ用事はもう少しかかりそうなんですが大丈夫ですか?」

葵が頷くと。

「良かったらこれを」と運転手はホットティーの入った小さいペットボトルを差し出す。
ちょうど温かい物を欲しかったからありがたく受け取る事にした。

「ありがとうございます」

「もう暫くお待ちください。あっ、もし車内が暑いようでしたらヒーターを切りますが?」

「大丈夫です。ちょうど良いですから」

運転手はまた建物の方に行ってしまった。

「ふあぁ~……ねむ……」

貰った飲み物を飲んで暫く経つと眠くなってきてアクビが何度も出てしまう。
眠くなったのはこの座席のシートのせいもある。
座り心地は本当に最高なのだ。


目を閉じてはハッとして慌てて目を開ける、また目を閉じてしまいを何回か繰り返してる内に……完全に眠ってしまった。
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