初恋泥棒
後ろから声がして、一瞬、私の中の時間が止まる。
だって、私の事を”サク”って呼ぶ人は1人しかいないもん。
「ヒロ…」
振り返るとやっぱりそこに立っていたのは裕翔で。
その隣にはまた、この間とは別の女の子。
「何やってんの?こんなとこで」
いつもこんな風に笑って話しかけて来ないクセに。
「べ、別に…。ただ写真撮ってただけだよ」
「ふーん。にしては、やけに楽しそうだったね」
冷たい目で、私を見下ろす。
私は、裕翔のその目が苦手だ。
冷たさの中に、寂しさも見えて。
裕翔が何を考えてるのか、分からなくなるから。
「あ、それカメラ?ねぇ裕翔、うちらも撮ってもらおうよ」
裕翔の隣の女の子が明るい声で言う。
裕翔が返事もしないまま、ノリ気な彼女は裕翔の腕を取って、桜の木の下まで連れて行く。
すると、少し話をしていた様子の2人。
どんなポーズにするか話し合いでもしてるのだろうか。
私は仕方なく、フレームを覗いて、その中に2人の姿を入れた。
すると、次の瞬間には女の子が裕翔の首に手を回していた。
「ハイ、チーズ!って言ってねー」
女の子の声が聞こえる。