夏の嵐と笑わない向日葵
「ノラー!?」
いつもなら、声をかければすぐに顔を出すのに、どこからも出てこない。
ノラ、どこに行っちゃったの??
まさか、家の外に……?
「ノラ!!」
雨に濡れながら、あたしはノラを必死に呼ぶ。
呼べば呼ぶほど、不安になっていくばかりだ。
「向日葵、どうかしたのか……って、びしょ濡れじゃねーか!!」
起きてきた嵐君が、あたしの所へと駆け寄ってきて、腕を引く。
「痛っ……」
「悪い!って……これ、どうした!?」
嵐君の掴んだ腕は、ノラが引っ掻いた爪の痕がある。
そこから流れた血を見て、嵐君は声を上げた。
「雷にノラが驚いて……」
「それで、ノラは?」
「…………」
そう尋ねられて、あたしは唇を噛んで俯いた。
そんなあたしの頬を両手で包み、顔を上げさせる。
涙が滲んで、ぼやける視界に、安心させるように笑う嵐君の顔が映る。
「そんな顔すんな、近くにいるって、な?」
何も言っていないのに、嵐君はあたしがなんて言おうとしていたかが分かったみたい。
「先に、向日葵の手当てだ。そうしたらすぐに、ノラを探しに行こう」
「嵐君……うん、ありがとう…」
嵐君はあたしを縁側まで引っ張り、力無く縁側に座ったあたしの靴を脱がしてくれた。
「髪、拭くぞ」
そう言って嵐君はあたしの後ろに回り、髪を拭いてくれる。