ある日、パパになりました。

咲の学校生活

少し時間を遡って午前8時。葵と別れた咲は小等部の校舎の前に到着した。
「3週間ぶりかぁ、楽しみだなぁ」
ライブの時と同じ位ウキウキしながら、校舎へと咲は入っていった。昇降口を通り過ぎた時、後ろから、
「咲ちゃ〜ん、おはよ〜」
と元気のいい声が聞こえた。その声に咲は笑顔で振り返り、
「水ちゃ〜ん、おはよ〜」
と返した。咲に挨拶をしてきたのは佐藤水輝(さとうみずき)。あだ名は水ちゃん。咲の親友でルナキラの大ファン。
「久しぶり〜」
「水ちゃん、元気だった?」
「うん。咲ちゃんも元気そうでよかったよ〜」

キンコーンカンコーン

と盛り上がっている二人に水を差すように、チャイムが鳴った。
「やば、急がないと!」
そして、咲も、
「急がないと遅れちゃう!」
そう言って、教室に向かって走り出した。
咲と水輝との出会いは去年の夏休みだった。咲の通っている学校の図書館には珍しくライトノベルが置いてあった。しかし、それは、学校の本ではなく司書の先生の私物だったのだが、先生の好意で貸し出しがOKだった。その当時の咲は色鮮やかなイラストに目を惹かれて、一学期から読んでいた。そして、夏休みもほぼ毎日図書館に足を運んでいた。そんなある日、司書の先生から一人の女の子を紹介された。それが水輝だった。水輝も咲と同じ頃にラノベに興味を持ち、図書館に足を運んでいた。そして、たまたま、二人が来た日が被った時に、司書の先生が二人を仲良くさせようと言うことで紹介したらしい。先生の思惑通り、咲と水輝はすぐに仲良くなった。二人共それぞれ友達はいたが、その中に趣味を話せる友達がいなかった。だから、いつも本を読む時は一人だった。それを見かねた先生が動いた結果という訳だ。二人は、夏休みの間、図書館に通い、朝から、夕方まで、司書の先生と三人でラノベについて話していた。
しかし、この春休みは咲が色々と忙しく会えずにいた。それは、水輝も春休み前に咲から聞いて心配はしていなかったが、やはり会えていた人と会えないのは寂しいものだ。
久しぶりに会った二人は、担任先生の話は聞かず二人で話して、二学期の初日が終わった。そして、正門の前で別れた二人は、互いの帰路についた。咲は葵と待ち合わせている場所へと向かった。
< 26 / 33 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop