囚われのサンドリヨン ~御曹司様のご寵愛~【番外編を追加しました】
「ヤッさん(父の呼び名)、船の時間があっからよう」
軽トラの運転席から父の友人が、遠慮がちに呼び掛けた。

「おうよ……さ、美咲」
トンっと父が背中を叩く。
私はとうとう堪えきれなくなってしまった。

「う、う、ウワアアン、父ちゃああん!」
「み、美咲イイっ‼」


その後すぐに、ボロの軽トラは出発した。

荷台に隠れていた私は、そこでもたくさん、たくさん泣いた。

重ねてきた思い出だけが、頭の中に浮かんで消えた。

私の恋はあまりに未熟で、悲しみの処理の仕方も分からなかった。
 
どうして?

どうして私だけが……我慢しなくちゃいけないの、別れないといけないの?

大好き、大好き、愛してる。

別れたくない、離れたくない。
向こうだって私が好きだと言ってくれたのに……

思い出になんかしたくなかった。未来を一緒に歩きたかった。

あの人の隣に立つのは、どうして私じゃ
いけなかったの!



泣き疲れたのは夕暮れの島に架かった大橋の上。腫らした目に、渦潮を見ながら考えた。

今ごろ彼は、手紙を読んでくれただろうか……


大好きな王子さまの結婚式を、端で見ていたマーメイド。
 
彼女の悲しい結末が、今の私になら分かる。

喩えそれが、優しい王子さまでなくて、オニ悪魔のドS王子であったとしても。

愛した人の不幸など、彼女は願うはずもない。命を奪うなどとんでもない。

だからこんなに苦しいの。

いっそ私も彼女のように、
ここの橋から飛び込んで、泡と消えてしまいたい___
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