囚われのサンドリヨン ～御曹司様のご寵愛～【番外編を追加しました】

なのに今日。

今、皆の前で流れるような美声でスピーチをしているやたらと若い管理職、藤城貴彪(トウジョウ　タカトラ)課長。

私はこれからこの御方に『退職願』を差し出さねばならない。
　
なんて気鬱。

超のつく美声、美形、美スタイル、花形部所の若き課長。
噂では仕事にもプライベートも手が切れる、有能完璧人間だとか。

しかし私は彼がコワイ。

何故ならば。
目下、私の仕事は雑用だから、課の皆さんとの触れ合いは多い。
自然、仕事量の多い課長の雑用は多くって、よく呼ばれて行くのだが……

実は私、全般に少しトロくさい。

『四葉ぁ…テメェ、いい加減にしろよ。資料のオモテウラを逆に閉じてどうすんだ？』
『ひぃっ…ずびばせん…』

と毎回こんな感じ。

その結果、彼の私への呼び方は入社したての4月から
『四葉サン』→『四葉美咲っ！』→『四葉ァ(怒)』
とだんだん剣呑に変わっていった。


以上から、私は気付いたことがある。

コイツの面(ツラ)をひと皮剥けば、パワハラ、理不尽、俺様で表裏ありまくりの冷血人間。
　
私が退職など願い出ようものならば、“お好きにどうぞ”　と極上の笑みを浮かべるだろう。