囚われのサンドリヨン ~御曹司様のご寵愛~【番外編を追加しました】
第2話 課長の正体
チントンシャン……
バックミュージックは宮城道夫
『春の海』。

藤城課長に連れて来られたのは、筝三味線の風雅に響く、高級そうな小料理屋だった。

課長は常連さんらしく、
「いつもの」
と女将さんに片手を挙げ、案内もなしに奥の部屋へと進んでいった。

まさかワリカンじゃないよなあ……

後に続く私は、さっきから支払いの心配ばかりをしている。
仕方ないでしょ?
何せ一文無なのだから。

小さな個室に入ると、紫檀の和テーブルを挟み、藤城課長と向かい合った。


「…………」
「…………」


美人の女将さんに飲み物を聞かれ、まさか『オレンジジュース』とも言えず、
 “カチョーと同じで”
と言ったのを最後に、気まずい沈黙が続いていた。

やがてお銚子とお料理が運ばれてくると、課長は女将に何か耳打ちし、襖を閉めさせた。

人払いというやつだ。

 いたたまれない雰囲気の中、課長は手酌で冷酒を注ぎ、ついでに私のコップにも注いだ。
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