囚われのサンドリヨン ~御曹司様のご寵愛~【番外編を追加しました】
第10話 母の記憶
「全くもうっ、カチョーってば…」

着替えを終えた私は、ブツブツとひとりごち、長い廊下をドカドカ歩く。

あの人が弟さんだったのかあ。

課長にソックリだったけど、アサダさんの言う通り、課長より柔らかい感じ?
ちょっとエッチっぽいけどな。

にしても、初対面がアレなんて……ん?


食堂(といって差し支えない)の大扉を通りかかった時、聞きなれた美声が聞こえてきた。

先程の2人はどうやらここに逃げ込んだらしい。私は思わず歩みを止めた。


「……何故突然戻ってきた?」

「あれぇ、知らなかったな。
 自分の家に帰るのに、イチイチ兄さんの許可がいるようになったのか」

「お前は勘当された身だ。今更っ」
「住民票も戸籍もここにあるんだけど」

「くっ…
 お前が戻ると厄介な事になる」

「そお?」

何やら不穏な雰囲気。
どう考えても再会を喜んでいる風じゃない。

私は身を潜めると、鍵穴から中の様子をうかがった。
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