囚われのサンドリヨン ~御曹司様のご寵愛~【番外編を追加しました】
第11話 ファースト・キス
3月。

我々使用人は、明後日の件の当主、藤城弥一郎様の「生誕70周年際」(要するにお誕生会)の準備に追われていた。

久々の旦那様のご帰国に加え、各界からVIPが集まるパーティとあって、お屋敷内は騒然としている。


「はああああ…」
100枚はありそうな、銀のお皿を磨きながら、私は大きなため息をつく。

私のあの衝撃のコクハク以来、藤城課長と私の間に変わったコトは何もない。

私の気持ちを知ったうえで、以前と変わらぬ主従関係。

変わったことと言えば、時たま会社で目が合うと、意地悪にニヤッと笑うだけ。

私のほうはもう、課の皆さまにバレやしないかとドッキドキだ。

なんたるヒトデナシ、人非人。
…悔しい。


最近ましなコトといえば、将馬サマが帰ってきて、女中頭のアサダさんの機嫌がすこぶる良いくらいか。

ようやく99枚目を磨き終わった時、向こうからニコニコしながら、レイカ様がやって来た。

嫌な予感しかしない……
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