契約彼氏はエリート御曹司!?【試し読み】
「ちょっと緊張するなぁ……」
エレベーターの中で、鏡を見ながら独り言を漏らす。
今日が会議のある日でよかった。とりあえず、白のノーカラーシャツにネイビーのジャケットを羽織っている。ベージュのパンツが幅広で少し緩いけど、突然呼び出されたのだから仕方ない。
パウダールームでメイクも直したし、これで身なりは大丈夫だろう。
エレベーターを降りると、一番奥にある五○三会議室へ向かった。
「よ、よし……!」
到着すると、扉は閉まっていた。
部屋の番号が書かれているプレートの下には、スライド式の「空室/予約/使用中」という表記サインがある。
そこには赤色で〝使用中〟の文字が表示されていて、ドアの上からも明かりが漏れていた。
総本部長はもう……中にいるはずだ。
妙な緊張感に襲われつつ、ドアをノックした。
「はい」
ドアの向こうから、低くハッキリとした声が聞こえる。
うわっ……声だけでイケメンだって想像しちゃう……艶っぽい声だなぁ……。
「せ、設計部の瀬那です。失礼します」
ドアのハンドルを下げると、恐る恐る中へ入った。
会議室は八人程度が打ち合わせで使うようなこぢんまりとした部屋だった。
正面は壁一面がガラス張りとなっていて、多くの車が走る大通りを見下ろせる造りとなっている。その窓のすぐそばで仕立てのいいスーツを着こなし、スラリと立っている男性がいた。
……閂総本部長だ。
思わず、そのキレイな立ち姿に見惚れてしまう。
「ああ、瀬那さん……お疲れ様。営業総本部の閂 蒼一です」
私がドアのそばで立ち尽くしていると、長い足でこちらに歩み寄ってくる。
近づくと彼のスタイルのよさだけではなく、顔の美麗さにも目がいった。
キリリとした眉に意志が強そうな瞳。高い鼻筋に、上品な唇……加えて爽やかにセットされた黒髪。
身長も想像していたより高い。一六二センチの私が見上げるから、一八〇センチ以上あるはず。ジムでも通っているのか、スーツの上からでも、鍛えられた身体だとわかるほど体格もいい。
イケメンで仕事もデキて、何があっても守ってもらえそうな体格……しかも大企業の御曹司か……うーん、完璧。
多くの女子社員が狙うのも納得する。
「は、初めまして……瀬那葉月です」
私は心の中で称賛しながら、頭を下げる。
すると、閂総本部長が苦笑した。