マーガレット
「ありがとう、ございました……」
目頭を指で抑えながら浩介さんが言った
その言葉を合図にして立ち上がり、私たちは診察室をあとにした
さっきとは対照的に騒がしい廊下
拓海のために看護師さんたちが動き回っている
ここから数十メートル先には集中治療室がある
私はおぼつかない足取りでそこに向かう
やがて集中治療室に来ると、目の前の光景に心臓を抉られそうになった
点滴をたくさん打って、
絡まりそうなほど多くの管に繋がれて、
包帯とギプスでぐるぐる巻きにされて
身動きひとつとらない、変わり果てた拓海の姿がそこにあった
無機質で冷たく分厚いガラスに隔てられた私と拓海の距離
触れることも、抱きしめることもできない
「好き」と言うことも、キスすることもできない
たった一瞬で、私はこんなにも無力になる