マーガレット

「お待たせ」


駅の改札を抜けると、柱にもたれて待っている拓海に声をかけた



「今日は遅かったな」


「ごめんごめん。お父さんと話してて」



外は吐く息が真っ白になるくらい寒く、どれだけ重ね着しても暖かくない


そんな寒空の下、拓海はいつも待っててくれる



それにしても、本当に寒い……



「ほら」


マフラーに顔を埋めて寒そうにしていると拓海が手を差し出した


私が無言でその手を取るとぎゅっと握ってくれて、拓海の体温が伝わってくる



「やっぱり拓海の手は安心する」


大きくて、温かくて包容力があるくせに、案外骨ばってるところに、優しさと強さを感じる



「あんまり可愛いこと……言わないでくだサイ」


「えっ!?」



驚いて見上げると、拓海はそっぽを向いていた



もしかして、引いた……?



だけど耳朶が赤くなっていて、照れているんだとわかった



それを見てなんだか私も急に恥ずかしくなって、


「き、気をつけます……」


としか言えなかった。




< 5 / 24 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop