逆光








「正反対で、相手が何考えてるのか分からない。相性悪そうなのに、なんで別れないの?」


和泉の就職先。
大手出版社、ファッション雑誌編集部の編集長が、和泉にそう質問したらしい。

ゆるやかにウェーブがかかったブロンドと、黒くゴテゴテした眼鏡がアンバランスな印象の人だ。
だが、その不安定な見た目が一周回ってかっこよく見えるのだから、人の目とは不思議なものだ。

ともかく、和泉の上司である編集長、安国寺が和泉に質問したのだ。
「なぜ寺田総馬と別れないのか」と。

和泉の答えはシンプルだった。


「総馬さんが私のこと大好きだからですよ」


安国寺からこの話を聞いた時、総馬は飲んでいた緑茶を噴きそうになった。

言いたいことはたくさんある。
たくさんあったが、何とか堪えて安国寺に笑顔を向ける。






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