逆光





これでいいのだと和泉は思う。
ティファニーの結婚指輪。
誕生日にはケイトスペード。
お金がある夫。

相手が寺田総馬だというのは当初の計画とは違うが、和泉は思い描いていた幸せを手に入れたのだ。


「何で今日なんですか?」

「なんとなくだ」


誕生日でもクリスマスでも記念日でもない日。
11月13日という微妙な日に何故プロポーズしたのか聞いても、総馬は曖昧に笑っただけだった。


「一カ月くらい前からプロポーズすることは決めてたんだ。ただ、色々と準備に手間取ってな」


照れ臭そうにそう言ってから、和泉を抱きしめた。






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