逆光
「随分前から国連の調査団の方々から資料も貰ってるんですけどね。やっぱり机上でいくら考えても実際見ないとどうしようもない、ということになったんです。あと病院も作ることになりました」
「病院」
「農村部での流産が異常に多いそうです。生まれても奇形児だったり、数ヶ月で死んでしまったりだそうで」
「……」
やっぱりか、という思いが強かった。
今、国内では帰還兵のPTSDの話題でいっぱいで、ナムト国の現状はほとんど聞かされない。
けれど、確実に除草剤はナムト国を蝕んでいる。
「寺田さんは、今作っている人畜無害な除草剤が出来たら、ナムト国へ移住しようと考えているそうです」
「はい?」
柄にもなく和泉は面食らった。
全然、そんな話は聞いてなかったからだ。