無機質な恋模様

「おはよう。リンタ君」

今日も目覚めた瞬間、一番最初に目にしたのは輝くばかりの彼女の笑顔だった。

毎朝優しい手つきで僕のボディにタッチし、意識を覚醒させた所で、明るく元気にそう挨拶してくれるのだ。

「今日もいっぱいお仕事あるよー。頑張ってね!」

言いながら、彼女は四つに分かれている、僕のお腹部分の一番上のトレイをガタッと引き出すと、すぐ横に積まれている箱の中から紙を取り出して、せっせと詰め込んだ。

二段目以降も同じ作業を繰り返す。

丁寧でありながら素早い、その手際の見事なこと。

最初はおっかなびっくり触っていたような感じだったけれど、今やすっかり僕の扱いも慣れたよね。

入社してからもう3ヶ月経つもんね。

真奈美ちゃんはすごく頑張り屋さんだから、きっとすぐに色んな事を覚えられるとは思っていたけど、期待通りの成長を見せてくれて、先輩としてはとっても嬉しいし誇らしいよ。

って、僕も去年ここに配属されたばかりだから、キャリアは大して変わらないんだけど。

でもまぁ一応、先輩は先輩だもんね。

ただ、僕はこの「電算室」から出られない……どころか、今いる位置から一ミリも動く事ができないので、すべての時間、真奈美ちゃんと一緒にいられる訳じゃない。

それがとっても悔しくて残念。

こんな風に、彼女の方から会いに来てくれるのを待つしかないのだ。
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